目の前が黒い光に包まれている。男は自分が何処にいるのか分からなかった。体中にはなんとなく嫌な気怠さが重く圧し掛かっていた。男は自分に何があったのか思い出してみることにした。口の中に嫌な臭いが広がった。
「グリーンドリアン・・・」
男はふと頭に浮かんだこの言葉を口にした。なんだかこの言葉がとても意味のあるものに思えたのだ。ただ、男はその言葉が何を意味するのかまるで思い出せなかった。
「ご臨終です。」
静かに医者は言った。
「そうか。ご苦労。」
コロビー警部はそう静かに言って俯いた。目の前には一人の犠牲者の死体が横になっていた。グリーンドリアンによる最初の犠牲者である。彼は3日間も生死の境をさまよっていたのだ。
「可哀そうに…ドリアンの食べ過ぎで摂取カロリーが致死量を超えて死ぬなんて…」
そう言う新米の刑事を部屋に残し、コロビー警部は外へ出た。外の空気がいつもよりさびしい味がする、そんな気がした。
その事件は奈津藤真の勤める入浴対武事新聞社にも届いた。
「死んだか……」
奈津藤真はその事件を聞いて静かに茶碗を下ろした。
「遂に人を殺したかグリーンドリアン……」
そう言って奈津藤真は目を閉じた。
「いやまだ分かんないぞ。この被害者は何度も生死の境をさまよっていたらしい。何回か死んだと思われて、そして何度も生き返ったんだそうだ。今回はいつもより死んでる時間が長いだけで、明日にはまた生き返ってるかもしれない。」
同僚はやけに楽しそうに言った。昨日ずっと憧れていた女性と付き合うことになったのだ。
「全く、おめでたい奴だな。こんなときに。」
そう言いながら、奈津は納豆を頬張った。
その時は近づいていた。後に、世界を滅ぼすことになるあの三人の出会いが。
〜深夜〜
「ドリアンを嫌いな子はだぁれだあ????」
緑色物体が夜の街を舞う。その姿はまさに緑のゴキブリである。
街を足早に走る女性。ゴキブリはその女性を見逃さなかった。
「ドリドリドリ!!!!」
ゴキブリは女性の前に着地した。女性は小さい悲鳴を上げ、腰を抜かした。そして辺りに広がるドリアンの臭いに思わず顔をしかめた。
「おい。お前ドリアン嫌いだろ?ん??」
化け物は女性に詰め寄った。そして女性が戻しそうになったその時、
「止めろ!」
黄色い声が響き渡った。
「誰だ貴様・・・吾輩があの天下のグリーンドリアンだと知っての行動だろうな!」
化け物は声のほうを向いて言った。
「いや、誰だよお前。」
「は?だから吾輩はグリーンド・・・」
化け物が自分の言葉を言い終わらないうちに、その言葉は声の主の強いパンチによって遮られた。
「き、貴様!吾輩に何を!?」
「俺がグリーンドリアンだぁぁああ!!!」
化け物は再び顔面を殴られることになった。その体は宙を舞い、地面に強くたたきつけられた。
「はっ!大丈夫ですか!?御嬢さん!」
グリーンドリアンは女性に気づき、紳士的に声をかけた。
「あ、はい。ありがとうございます。」
女性は少し動揺していたが、自分の足でゆっくりと立ち上がった。
「一人で帰れますか?」
「はい。大丈夫です。」
「そうですか。良かったです。気を付けて帰ってくださいね。」
グリーンドリアンは優しい笑顔で女性を見送った。女性が見えなくなると、グリーンドリアンは地面の上で伸びている偽グリーンドリアンのほうを向いた。
「おい、お前は誰だ。」
そこには先程の紳士的なグリーンドリアンは居なかった。まるで鬼の形相の彼は自分の偽物を睨み付けた。
「俺は・・・ある時は普通のナットウマン、またある時は奇妙なナットウマン!しかしその実体は心は20代、体は60代その名も、ナットウマン!」
偽物はそう答えた。
「な!?お前があの犯罪者のナットウマン!?」
「そうだグリーンドリアン。それで・・・その・・・」
「何だモジモジして。早く言え。」
「10年前からずっと先輩が好きでした!付き合ってください!」
「ふふっ。実は・・・私もだナト子。」
「本当に!?」
「ああ。本当だとも。ずっとお前が好きだったんじゃ。ナト子!」
「せんぱぁぁぁあああああああい!」
「んんんなぁぁぁぁあああとぉぉぉぉぉおおおこぉおおおお!!!」
二人は力強く抱き合った。世界は二人の愛で覆われたのであった。
「止めい!つい、ノってしまったじゃないか!気持悪いなお前!」
カチャリ。そんなグリーンドリアンの足元で、静かに響く金属音。
「フハハハハ!油断したなグリーンドリアン!捕まえたぞ。」
足に手錠。月明かりが不気味に照らす。
「まさかお前最初からこれが狙いだったんじゃ・・・」
「懸賞金頂き!!!フヘヘヘヘ!!!」
「別にいいけどお前も懸賞金かかっているから二人とも捕まって終わるんじゃ・・・」
「いえーい!!稼ぐぜマニー!!!」
「全然聞いてねぇ。仕方ない・・・」
「グリーンチョップ!!!」
ナットウマンは宙を舞った。地面に叩き付けられたナットウマンの目には手錠を引きちぎったグリーンドリアンの姿が映った。
「さてナットウマン。お前にもドリアンの美味しさを理解してもらおうかな。ドリドリドリ!!!!」
ナットウマン最大のピンチ!どうなるナットウマン!?
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