「こいつらが最近ニューヨーコの空気を悪くしているという3人組みか。」
「はい、その通りです。彼らのせいでニューヨーコの空気はよどんています。住民は深呼吸もろくにできません。」
「なるほど。彼らの居場所は分かっているのか?」
「はい。優秀な警察犬が何匹も入院しましたが、彼らの居所は突き止めてあります。」
「さすが優秀なFBNの捜査員だ。ありがとう。感謝するよ。」
「いえいえ。大統領のご命令とあればなんなりと。」
そう言ってFBN捜査官、ダニエル・ポリス(32)は深々と頭を下げた。
彼はこの機会が出世のチャンスだと信じて疑っていない。確かにそうなのだが、彼はあまりに多くの警察犬を病院送りにしてしまった。一人の優秀な警察官が、エリートコースから足を踏み外した瞬間である。
「ところで大統領、彼らの居場所を突き止めてどうするんですか?逮捕するのだと思っていましたが、そういうつもりではないようですね。」
「ああ、君には言ってなかったか。」
第45代アメルカ大統領、カーネル・ウノは高圧的な笑みを浮かべながら言った。ダニエルはその笑みにイラっとしたが、出世のためだと思い我慢した。
「私は彼らを利用しようと思っているんだ。街の治安を守るためにね。」
大統領はそう言って、再び高圧的な笑みを浮かべた。ダニエルは唇をかみしめて怒りを抑えた。
ナットウマン 第六話
〜俺にはどうしても許せない人間が二種類いる。人のものを盗るやつと、臭い奴だ。〜
物部守谷
「全員動くな!!手をあげろ!!!」
ここはアメルカニューヨーコ州中央銀行。様々な人間の思惑や陰謀が渦巻くこの空間を、今日は3人の男が支配していた。一般に銀行強盗と呼ばれる彼らは、目だし帽を被り、手にショットガンを携え、足にはおそろいのシュシュをつけていた。
「おら、金を出せ!!この鞄につめろ!!!」
若い女性銀行員に詰め寄る男達。可哀そうに、銀行員は生まれたての小鹿のように足をがくがくさせているではないか。
「い、今とってきますから…」
生まれたての小鹿は奥の金庫へ向かう。急がないと男達が激おこぷんぷん丸になってしまう、その思いとは裏腹に足が満足に動かない。
「遅いぞ!!お前さては時間を稼ごうとしているな!!!」
ついに男の一人が怒り始めた。怒りと焦りは伝染する。男たちの怒号と緊張に耐えられず、ついに銀行員は床にへたり込んでしまった。
「てめえ!!!」
男の一人がショットガンを銀行員に向ける。引き金にかかった指に力がかかった。鈍い音がした。弾丸が空中に散らばっていく。その先にいる銀行員に吸い込まれるように。
女性銀行員は目をおそるおそる開けた。銃の音は確かにした、でも自分は怪我をしている様子は無い。何が起こったのだろうか。その目に飛び込んできたのは、溢れんばかりの緑色で彩られた大粒のドリアンであった。
「お前ら、レディに手を出すとはいい度胸をしているな!!!」
そこには大量のドリアンを抱え、颯爽と立つグリーンドリアンの姿があった。
突然の化け物の乱入に、強盗たちは慌てふためいた。しかもこの化け物が装備しているドリアンは、先程襲いくる弾丸から銀行員を守ったドリアンと同じものである。つまり、ショットガンの弾はこの化け物には効かない。
「うおおおおお!!!!」
強盗の一人がグリドリに向けて銃を乱射した。これは無謀な攻撃というものだ。大体どんなものでも、これをやった方は負ける。筆者も何度これで大貧民になったことだろうか。そんな訳で強盗の一人は腹部に剛速球のドリアンを受け、気絶した。
「やべえぞ二人になっちまった…」
「お前が銀行員に銃なんかぶっ放すからこんなことになってしまったじゃねえか!!お前が責任とれ!!」
「そもそもお前が強盗なんかやろう、って言い出したんだろ!!お前が責任を取れ!!」
「納豆ごはん」
「誰だ今の」
強盗たちはサッと後ろをみた。そこには全身ネバネバの、これまた気持ちの悪い化け物が壁にもたれていた。
「助けてやろうか?」
悪魔の囁きが聞えた。
第7話に続く